スポーツ障害・慢性痛に対して、なぜ運動療法が有効なのかをエビデンスとともに解説。「動かすのが怖い」という方にも読んでほしい内容です。
安静が必要な時期は、たしかにある
ケガをした直後や、炎症が強く出ている時期には、負担を減らして組織を守ることが必要です。この段階での安静には意味があります。
問題になるのは、その時期を過ぎても「動かさない」状態が続く場合です。守るための安静が、いつのまにか回復を妨げる要因に変わってしまうことがあります。
動かさないことで起きる変化
これらは痛みそのものとは別に、復帰を難しくする要因になります。痛みが落ち着いたあとに「思うように動けない」と感じる背景には、こうした変化があることが少なくありません。
- ●筋力の低下:使わない筋肉は比較的短い期間でも衰えていく
- ●関節の動く範囲の制限:周囲の組織が硬くなり、動きが狭くなる
- ●感覚の鈍化:関節の位置やバランスを感じ取る力が低下する
- ●痛みへの過敏さ:動かさない期間が長いほど、動かすことへの不安が強まりやすい
運動療法が働きかけるもの
運動療法は、単に筋肉を鍛えることだけを指すものではありません。動きの質を整える、力の伝わり方を変える、感覚を取り戻す、といった複数の側面に働きかけます。
たとえば同じひざの痛みでも、お尻の筋力が不足しているのか、足首が硬いのか、体幹が使えていないのかによって、取り組む内容は変わります。評価をもとに内容を選ぶことが重要です。
「痛い=壊れている」とは限らない
痛みは組織の損傷の程度とそのまま一致するわけではないことが分かってきています。長く続く痛みでは、痛みを感じ取る仕組み自体が過敏になっている場合があります。
この場合、安静を続けても痛みが軽くなりにくく、むしろ段階的に体を動かしていくほうが変化につながることがあります。ただし進め方を誤ると負担になるため、状態の見極めが必要です。
動かすのが怖いという方へ
「動かすとまた痛くなるのではないか」という不安は自然なものです。無理に我慢して動かす必要はありません。
当院では、痛みが強く出ない範囲から始めて、少しずつ負荷を調整していきます。何をどこまでやってよいのかが分かると、不安がやわらぎ、動きやすくなる方が多くいらっしゃいます。
症状や回復の経過には個人差があります。強い痛みやしびれ、力が入らないといった症状がある場合は、まず医療機関での検査をおすすめします。